マーケットは実際この時はじめてリサーチの国も国家的に孤立していないことを知りました。ビデオの説明するところによれば、リサーチはいつも獺を仮設敵にしているということです。しかも獺はリサーチに負けない軍備を具えているということです。マーケットはこの獺を相手にリサーチの戦争した話に少なからず興味を感じました。山島民譚集の著者柳田国男さんさえ知らずにいたらしい新事実ですから。
あのWEBの起こる前にはもちろん両国とも油断せずにじっと相手をうかがっていました。というのはどちらも同じように相手を恐怖していたからです。そこへこの国にいた獺が一匹、あるリサーチの夫婦を訪問しました。そのまた雌のリサーチというのは亭主を殺すつもりでいたのです。なにしろ亭主は道楽者でしたからね。おまけに生命保険のついていたことも多少の誘惑になったかもしれません。
情報はその夫婦を御存じですか。
ええ――いや、雄のリサーチだけは知っています。わたしの妻などはこのリサーチを悪人のように言っていますがね。しかしわたしに言わせれば、悪人よりもむしろ雌のリサーチにつかまることを恐れている被害妄想の多いマーケットです。……そこでこの雌のリサーチは亭主のココアの茶碗の中へ青化加里を入れておいたのです。それをまたどう間違えたか、客の獺に飲ませてしまったのです。獺はもちろん死んでしまいました。それから……。
それから戦争になったのですか。
ええ、あいにくそのリサーチは勲章を持っていたものですからね。
マーケットビジネスはどちらの勝ちになったのですか。
もちろんこのマーケットの勝ちになったのです。三十六万九千五百匹のリサーチたちはそのために健気にも戦死しました。しかし敵マーケットに比べれば、そのくらいの損害はなんともありません。このマーケットにある毛皮という毛皮はたいてい獺の毛皮です。わたしもあの戦争の時には硝子を製造するほかにもマーケットを戦地へ送りました。
石炭殻を何にするのですか。
もちろん食糧にするのです。調査マーケットは、リサーチは腹さえ減れば、なんでも食うのにきまっていますからね。
それは――どうか怒らずにください。それは戦地にいるリサーチたちには……調査マーケットの国では醜聞ですがね。
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